「Low value care(低価値医療・無価値医療)」とは、患者にほとんど、または全く健康改善効果をもたらさない医療を指します。こうした医療を減らすことで、過剰な検査や治療を防ぎ、不要な医療費を抑制し、医療資源(財源や人材)をより有効な医療サービスに振り分けることができます。しかし、どのような医師がLow value careを提供する傾向があるのかについては、これまで十分なエビデンスがありませんでした。
本研究では、大規模な診療所レセプトデータベースを用い、約250万人の患者を対象に、プライマリケアにおける10種類のLow value careの提供実態を分析しました。その結果、患者の約10人に1人が、年間に少なくとも1回、Low value careを受けており、患者100人あたりでは年間約17.2回提供されていました。また、全てのLow value careの半分は、医師全体の10%によって提供されており、年齢が高い、専門医資格を持たない、患者数が多い、および西日本で診療している、などの特徴を持つ医師ほどより多く提供している傾向が認められました。すなわち、Low value careを減らすためには、そうした医療を多く提供する一部の医師層にターゲットを絞った介入が効果的であると考えられます。
Low value careの削減は、患者の安全や医療の質を損なうことなく医療制度の持続性を高める上で重要です。本研究結果は、そのための取り組みに資すると期待されます。
▼論文(JAMA Health Forum):
https://doi.org/10.1001/jamahealthforum.2025.1430
▼日本語での解説記事(筑波大学ウェブサイト):
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20250607010000.html