パンデミック期間中COVID-19流行期に喘息による入院が激減


 COVID-19流行期間中の喘息入院が激減

~感染拡大防止策の2次的効果~


喘息は、我が国で100万人以上が継続的に治療を受けている頻度の高い疾患です。喘息のコントロール不良による発作は、呼吸機能の低下につながるだけでなく、入院加療による学校・仕事の欠席・欠勤による社会的コストも大きく、喘息発作をできるだけ減らすための取り組みが求められています。

これまで、呼吸器感染症に罹患することで喘息発作が起きやすくなることが知られていました。今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も呼吸器感染症と考えられ、喘息発作が増加することが危惧されていましたが、大規模な疫学的調査は限られていました。そこで、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻公衆衛生学分野の宮脇敦士助教、阿部計大特任研究員、小林廉毅教授のグループでは、株式会社メディカル・データ・ビジョンより無償提供を受けた2017年1月から2020年5月まで継続的に観察された全国272の急性期病院における診断群分類包括評価レセプトデータを用いて、2020年のCOVID-19流行後の喘息による入院数が、2017年から2019年の同時期の入院数と比較してどのように推移しているのかについて検討しました(喘息による入院は喘息発作をよく反映する臨床的イベントとして考えられています)。

  その結果、2020年第9週(2月末)以降、喘息による入院数が、2017年から2019年までの同時期と比較して、顕著に減少傾向にあったことがわかりました(図)。統計学的に年・週によるトレンドを調整した後では、2017-2019年と比較して、週あたり平均55% (95%信頼区間 45%-63%; p<0.001)の減少が認められました。これらの喘息による入院の減少傾向は子ども(18歳未満)、成人(18歳以上)双方で認められました。

 

本研究において認められた劇的な喘息による入院の減少は、薬剤による治療だけでなく、私達個人や社会が生活様式を変えるだけで、喘息による入院の多くを防げる可能性があることを示唆しています。喘息の良好なコントロールのための予防行動や生活環境への配慮の重要性を、喘息のケアに関わるすべての人が、今一度認識する必要があります。本研究は1014日付で、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の公式機関誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に掲載されました。

 

 

 

図1

(本文より[一部改変])