医療費の中で健康に資していない、「無駄」なものは全体の20−30%に達すると言われています。その中でも、健康増進効果のない医療サービス(=low value care)は、削減の努力にも関わらず、医療現場でなお広く提供されています、Low value careのようなサービスは医療費の上昇だけでなく、患者に副作用や二次的な検査の負担を強いたり、本来別のより価値の高いサービスに使われるべき医療資源が価値のないサービスに使われてしまうなど、様々な影響を医療に及ぼすため、公衆衛生上の重要な課題です。医療の質の向上と医療制度の持続可能性を両立するために、low value careを包括的に分析しています。
Miyawaki A.*, Ikesu, R., Tokuda, Y., Goto, R., Kobayashi, Y., Sano, K., & Tsugawa, Y. (2022) Prevalence and Changes of Low-Value Care at Acute Care Hospitals: A Multi-Center Observational Study in Japan. BMJ Open. 12(9):e063171. http://dx.doi.org/10.1136/bmjopen-2022-063171.
この研究では、33項目のclaims dataで定量化可能なlow valie careのリストを作成した。その上で、242の急性期病院の入院・外来患者を分析し、low value careのエピソードが患者1000人あたり115回〜/年発生し、その医療費は少なくとも57億円/年であることを示した。
※本パイロット研究で、使ったlow value careのリストは、こちらのSupp Table 2–3。
Miyawaki, A.*, Kitajima, K., Iwata, A., Sato, D., & Tsugawa, Y. (2023) Antibiotic prescription for outpatients with COVID-19 in primary care settings in Japan. JAMA Network Open. 6(7):e2325212. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.25212.
どのような医師がlow value careをより提供するのだろうか?それを明らかにすることはlow value careが提供されるメカニズムを紐解く鍵になるはずである。この研究では、COVID-19に対する抗生剤処方(=low value careの1つ)の頻度が高齢の医師ほど高かったことを報告した。